八郎湖の水環境保全と流域の活性化をめざした懇談会の報告

 秋田県立大学で、「八郎湖の水環境保全と流域の活性化をめざした懇談会」が11月29日 に開催されました(写真1)。この会は、「八郎湖の水環境保全のために活動しているNPO関係者、八郎湖流域市町村や県、研究者が、現状や課題等についての情報交換や調査研究成果の発表等により、八郎湖の水環境の保全と流域の活性化や持続的発展を目指した協働のあり方等について意見交換を行う」というもので、我々、秋田水生生物保全協会からも杉山と木村が出席しました(写真2)。
発表は次のとおりです(敬称略)。

1)近年のアオコ発生状況とアオコ形成藻類の特性 秋田県立大 岡野邦宏 
2)高濃度酸素水供給装置による豊川の河川水質と底質の変化 秋田県立大 早川敦 
3)秋田地域振興局の活動報告
4)地域住民の参加による谷津田の再生と酒米生産 草木谷を守る会 石川紀行他
5)大潟村における八郎湖の水質改善に向けた最近の動向 佐藤 敦 
6)豊かでおいしい八郎湖 NPO法人秋田水生生物保全協会

 各報告は大変面白いものでしたが、我々は、八郎湖を回復するために何が問題か、何を行うべきか、という立場から次の内容で述べました。
@基本的な考え方は「八郎湖には今も、多くの漁業者がいて、魚がいる。逆に言えば、八郎潟の5分の1も残っており、多くの魚がいて、漁業者がいる。八郎湖の賢い利用を行おう」ということだ(図1)。
A大事なことは、八郎湖の漁獲量、漁業者、消費者の3者が正常になることだ。漁獲量が減って、漁業者が減り、結局、消費者が減少する、という負のスパイラルになってはならない。八郎湖の物理環境・生物環境が回復するためには、この3者の関係が基本だ(図2)。
Bこの観点から、漁獲量を見ると(図3)、魚類のピークは1956年13,952トンだが、現在の漁獲量は287トンで約50分の1となっている。またこの魚種は、ワカサギが主体で、フナ類やハゼ類などの地域魚類は大きく減少している。
この中でシジミ類が1990年に1万トンを超え、現在はゼロとなっている。これは、汽水でしか繁殖できないヤマトシジミが、1987年9月に防潮水門の工事中に湖内に海水が流入したことにより大増殖したものだ。しかし、20年以上も経った現在、母貝がいないことや底質の悪化などから再び繁殖させるのは簡単ではない。
C大きな問題として、漁業者の激減がある。1975年には1,093人いたが、現在、221人までになっている(図4)。後継者が無くなれば、魚を漁獲する者はいなくなり、結局、漁獲量として湖内から湖外へ出すことなく、窒素やリンが八郎湖に残るということになる。水質や底質、富栄養化の問題を考える際、きわめて大きな問題であり、このことを理解する必要がある。
D以上のことから、我々は「八郎湖の豊かな恵みを味わう会」を行っている(図4)。この会も3回目として行っているが、今回の内容に関しては会のHPに述べているので、ぜひ、見てください。

写真1 会場の様子 写真2 発表を行う杉山
図1 図2
図3
図4
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