八郎湖流域管理研究会 第2回シンポジウム
八郎湖流域管理と地域連携 ―林業、農業、漁業の新たな取り組み―

 平成26年3月9日にカレッジプラザ講堂(明徳館ビル2階)で「八郎湖流域管理研究会 第2回シンポジウム 八郎湖流域管理と地域連携―林業、農業、漁業の新たな取り組み―」が、開催されました。以下に、当協会会員が参加した様子を掲載します。
チラシ  当日のプレゼン  資料「八郎潟から60年、漁業に何が起きたか」
豊かな八郎湖 昔・今・これから

                    鈴木秀夫(しらうお機船船びき網漁業 任意組合会長)
                    杉山秀樹(秋田県立大学生物資源科学部)

 八郎潟は男鹿半島の付け根にあり、海と繋がる汽水湖で、面積は国内第二位であった。しかし、1957年に干拓が着工され、1961年に防潮水門が締め切られる、1977年に竣工した残存水域は淡水湖になり、現在の八郎湖の名称となった。それでも約五分の一の水域が残り、現在でも数百人の漁業者がおり、ワカサギは国内3番目の漁獲量を生産し、獲れたものは鮮魚や佃煮などに利用されている。
 今回、シンポジウム「八郎湖の流域管理と地域連携」の一環として「漁業」について報告する。最初に、鈴木氏から八郎湖漁業の実態について述べ、その後、杉山から若干の補足を行う。なお、本内容は鈴木氏から杉山が聞き取りし、一部追加・修正したものである。




昔の豊かな八郎潟
 私は昭和8年生まれ、80歳だ。親も漁師をやっていて、私が3代目だ。昔の八郎潟はまさに「宝の八郎潟」だった。
さし網、ふくべ網、延縄などさまざまな方法で獲っており、シラウオ、ワカサギのほか、ボラ、スズキ、フナ、グンジ(マハゼ)、ナットウゴリ(ジュズカケハゼ)、ウナギ、ヤツメウナギなど本当にいろいろな魚がいた。中でも、シロメ(ボラ)の刺し身がもっともうまかった。コイは少なく、目立たなかった。
戦争中も食べていたし、八郎潟で生きていた。魚以外でも、風が吹くとニラモク(アマモ類)が岸に寄るので、干してトイレットペーパーに使った。ナガモク(ホザキノフサモ、エビモなど)は棒ですくい上げて肥料に使った。ガンガンといって、獲った魚は近くの母さんが秋田駅まで運ぶと、並ばなくても仲買がすぐに買っていった。
 干拓をすることになったときは、本当に大変だった。結局、保証金や増反もあったが、県の許可で漁業はできるということになった。干拓後は、国内でも有数のコイの網生け簀養殖をやったりしたが、結局、うまくいかなかった。

今も豊かな八郎湖
現在、私は船びき(しらうお機船船びき網漁業)だけをやっている。漁期は10月1日から1か月、ただし11月15日まで許可されている。操業時間は6時30分から1時間だけ、最初の5日間は45分だけとしている。操業は気が合った2人が2隻に並び、1つの網を曳きながら行う。現在、100人程度が行っているが、最初はシラウオが主体で、後半はワカサギを獲る。
シラウオは3,000円/kgもするが、最近、漁獲量が極端に落ちている。ワカサギは毎年、それなりに漁獲されているが、漁獲量は120kg/日以上は買わない。市場がないのでセリはなく、漁獲したものは直接加工業者に持って行く。シラウオもワカサギも、すぐに鮮度が悪くなるので、業者まで直ぐに持っていくのもしょうがないと思う。

これからの八郎湖
 現在の問題点は、まず、跡継ぎがいないことだ。これは自分だけの問題ではなく、八郎湖の漁師者全体で、後継者がいる者は数人しかいない。今持っている船も、網も、倉庫もどうなるのだろうか、不安だ。
 これには、さまざまな理由がある。漁師が儲ければ、後継者が増えるかも知れないが、ワカサギ漁獲量が120kg/日の制限がある。単価が上がればよいが、ずっとこのままだ。業者もこれ以上買っても売れないので、しょうがない。皆が、佃煮も何も食べなくなったからだ。
 ブラックバスの影響もある。1mもあるような大型のコイが増えている。シジミもまったく獲れないし、さまざまな魚が昔と比べ、美味しくなくなったように思う。今売れる魚はシラウオとワカサギだけだが、シラウオはなぜ減ったのか、ぜひ調べて欲しい。
 そんな中で嬉しかったことは、5〜6年前に地元の小学生に昔の八郎潟に似た「打たせ船」をつくり、船に乗せたり、見せたりしたことだ。本当に喜んでもらった。
 八郎湖がいて、魚がいて、漁師がいるからこそ、いろんな事ができるのだ。
しらうお機船船びき網漁業
図1 八郎潟漁獲量の推移 図2 干拓前(1950〜56年)、干拓中(1957〜77年)、干拓後(1978〜2012年)の年間魚種別・漁獲量
図3 近年のワカサギ漁獲量の推移 図4 近年のシラウオ漁獲量の推移
図5 近年のハゼ類・フナ類の漁獲量 図6 漁業許可件数
図7 八郎湖増殖漁協組合員数の推移 図8 漁業者数と漁獲量の推移
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