Top
 ハタハタは美味しい魚だ。ただし、時期、場所、鮮度、大きさ、料理法などを知った上でのことだ。そんな意味で、鳥取県沖合で9〜10月に漁獲されるハタハタ鮮魚の大型個体は、本当に美味しい。実際、経歴が明らかであるからこそ、美味しいのだ。写真に従い、順番に見てみよう。
 写真1は秋田市の中央卸売市場で、鳥取県の卸業者が受けたハタハタ鮮魚(2013年9月28日)。市場の関係者によれば、この時期のものは、鳥取県で大型個体だけを選別したもので、入荷量は比較的少ないとのことだ。また、最近は10月の鳥取県は脂がのっていることが秋田県内でも知られるようになってきているとのことだ。
写真1 鳥取県産ハタハタ
 写真2および写真3は、潟上市内の魚屋で購入したハタハタの三五八漬け(2013年9月26日)。お店の方に聞いたところ、鳥取産とはっきり言っていた。鮮度がよく、漬け過ぎではなく、そのまま塩焼きにすると、十分に脂がのっており、改めて、この時期の鳥取県のハタハタを見直した。
写真2 潟上市で購入したハタハタの三五八漬け 写真3 写真2のハタハタ三五八漬け塩焼き
 写真4はハタハタの塩焼き、写真5はハタハタのしょっつる鍋だ。秋田市内の飲食店で9月下旬に食べたものだが、主人が「これは市内の魚屋で買った、県外の鮮魚だ」とはっきり教えてくれた。状況から、このハタハタは鳥取県産である可能性がきわめて高いと考えられた。
 食べてみると、塩焼きは驚くほど脂がのっており、しょっつる鍋は脂が浮き、一緒にいた方は「ハタハタがこんなに美味しいとは・・・」と言っていた。私としては秋田産と比べ、脂がべたべたであること、ブリコがないこと、中骨が軟らかく抜きづらいことなどを説明したが、確かに、美味しいと思ったのも事実だった。
写真4 ハタハタの塩焼き(県外産ハタハタ) 写真5 ハタハタのしょっつる鍋(県外産ハタハタ)
 さて、ここでは写真は示さないが、9月下旬に秋田県内の食堂でハタハタ塩焼き定食を食べた。主人に聞いたところ、このハタハタは秋田で獲りたてのものだそうだ。しかし、この時期、秋田では漁獲されていないこと、下顎を含め全体が白色であったが秋田産はより濃い色であること、この時期の秋田産は卵巣の割合や胃の内容など他県産と相違していることなどから、このハタハタは秋田産ではない可能性が高いように思った。
 いずれにせよ、ここで食べたハタハタは十二分に脂がのっていたのは事実だった。しかし、結局、何を食べたのか分からなくなってしまった。
私たちは単に脂肪やタンパク質を食べるのではない。何よりも、どこのものかがわからなければ、味もわからなくなり、結局、まずいものとなってしまう。ハタハタの秋田産、鳥取産、それぞれが美味しいのは間違いないことなのに。
ハタハタの多様な世界  D 鳥取県沖合で9〜10月に漁獲されるハタハタについて考える
 Top