No.29 ヤリイカを炒める時はしょっつるが必須
 ヤリイカについては、ホームページで3月15日に卸売市場開放デーに行き、写真を撮り(写真1)、「まさに旬で、マイカと呼ばれるスルメイカと比べ、身は薄いが食べやすく、上品で香りが素晴らしい。産卵期は4〜5月で、大型のものはこれから出るようになるので楽しみだ」と述べた。
 実は、この文章を書いたのは、その前の3月12日にヤリイカをスーパーで購入し、しょっつるで炒めたところ、その美味しさに心から驚嘆したからだ。ヤリイカはスルメイカと違い、身は軟らかで、食べやすく、上品な香りがあった。その時の食べ方が、しょっつる炒めだった。材料は、秋田県産ヤリイカに、東京都大島産絹さやと秋田産長ネギ、調味料は八峰町産しょっつる、それだけだ(写真2、写真3)。
ヤリイカをしょっつるにしようかと思ったのは、さらに、その前がある。絹さやとぶなしめじにナンプラーを炒めたところ、味に深みがあり滋味のあることを教えてくれたからだ(写真4)。
ベトナムのニョクマムやタイのナンプラーも秋田のしょっつるも魚醤の一つで、魚と塩による時間と人類の知恵によってできたものだ。魚醤の話しは尽きないが、ヤリイカとしょっつるの炒めは両者がフィットし、全く違う驚きの世界へと誘ってくれる。
ここで話しは最初に戻る。「ヤリイカを炒めるときはしょっつるが必須」ということがわかったので、3月16日のホームページのとおり、卸売市場開放デーに購入したヤリイカを二通りで食べた(写真5)。
一つは、軟骨や内臓が入ったまま適当に切り、しょっつるだけで炒めた(図6)。もう一つは、丸ごと醤油、黒砂糖、味醂で煮付け(図7)。この煮汁が残ったので、じゃがいもを煮た(写真8)。
結果として、しょっつる炒めが圧倒的だった。味に迫力があるが、それにもかかわらず上品なのだ。一方、煮付けは間違いなく伝統的な味で、「普通にうまい」ではあるが、同時にしょっつる炒めを食べた後は、何かが足らない気がした。
しかし、この二つを比較するのが間違いであった。それぞれが完成した味で、その時にご飯を一緒に食べるのか、飲む酒はワインなのか日本酒なのか、いわんや、体調や前日の食事など、選択は異なるのだ。
当然のことながら、今回のヤリイカは鮮度がよく、時期にも適当な大きさで、しょっつるも、その種類、そのメーカーのものが合ったから美味だったのだ。ある意味では、偶然の出会いであり、二度と会うことが出来ないかも知れない。そう思うと、これからも、ますます、さまざまな魚に出会い、素晴らしい料理で楽しみたい気持ちになる。

写真1 ヤリイカ(市場開放デー3月15日に購入)
写真2 ヤリイカのしょっつる炒め
写真3 これが驚きの味
写真4 ナンプラーの野菜炒め
写真5 使用した鮮度の良いヤリイカ
写真6 ヤリイカのぶつ切りにしょっつる炒め
写真7 ヤリイカの丸ごと煮付け
写真8 ヤリイカの煮汁で煮たじゃがいもと一緒に
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