No.24 今の時期は、サメ
 厳冬のこの時期、サメを食べなければ、あまりにももったいない。毎日のように海が時化(しけ)、漁業者が海に出る日はほとんどない。その合間をぬって、やっと漁獲してくる。網の中に入っているのはマダラとサメだ。
秋田でサメと呼んでいるのは、アブラツノザメのことだ。「アブラ」がのった大きな肝臓があり、背鰭の前には「トゲ」があるので、この名前となっているが、地元では単に「さめ」と呼んでいる(写真1)。
太平洋を広く回遊しており、アラスカ湾で標識放流されたものが秋田沖で漁獲されたこともある。日本海に入り秋田沖で漁獲されるのは1月、2月がピークだ。
一方、秋田県のサメ類漁獲量は、2012年は82トンで、クロマグロ101トンやフグ類72トンとほぼ同じだった。しかし、ここ50年の漁獲量で見ると、サメ類は1973年がピークで1,706トンであったが、最近は、実に約20分の1まで激減しているのだ(図1)。アブラツノザメは成熟するまでにオス14年、メス23年と成長がきわめて遅く、漁獲量が徐々に変動しながら減少し、気がついたらこうなっていたのだ。
さて、アブラツノザメはまさに地魚・旬の魚の代表の一つで、今の時期はこれに限る。まず、買うことからはじまる(写真2)。後は、調理して食べることになるが、鮮度のよいものは刺し身だ(写真3)。嫌なニオイはまったくなく、脂がのっているがさっぱりとしており、わさび醤油でいくらでも食べることができる。普通は、味噌漬けにして焼く(写真4)。味噌や酒、ミリンの量によって味付けはそれぞれだ(写真5)。それでも残ったならば、冷凍にしておければ、いつでも食べることができる(写真6)。オリーブオイルでソテーにするのもよい(写真7)。サメの頭をゆでて、箸で丁寧に身を取り酢味噌で食べるのもよい(写真8)。
アブラツノザメはクセがなく食べやすいので、さまざまな食べ方でいくらでも食べることができる。そして食べるごとに、地元に素晴らしい文化と知恵を持っていることに誇りを感じる。今の時期は、サメに限る。
写真1 アブラツノザメと背鰭前方の棘 図1 秋田県におけるサメ類漁獲量1956年〜2004年
(最大1973年1,706トン)
写真2 卸売市場開放デー(2014年1月12日) 写真3 鮮度のよいものは刺し身だ(男鹿産)
写真4 味噌漬け焼き 写真5 味噌漬けは、味噌とミリンで
写真6 冷凍した味噌漬けを焼いたもの 写真7 オリーブオイル・ソテー
写真8 サメのベッコウ
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