No.22 元旦のアユ
 中村守純先生(1914-1998)は、夏に友釣りで釣ったアユを冷凍にしておき、元旦には必ずアユの塩焼きを食べた。
現在、秋田水生生物保全協会員の僕(杉山秀樹)に、魚の世界を教えてくれたのは中村先生だ。正しくは、中村先生から、魚というものの見方、考え方を教わったのだ。
 中村先生は1914年に生まれ、滋賀県水試を経て、第二次世界大戦中に新宿にあった資源科学研究所に入り、1969年には高著「日本のコイ科魚類」を執筆された。その頃学生であった僕は、中村先生がいた新宿の資源科学研究所に毎日のように通い、飼育していたフナ類やタナゴ類などに餌をやったり、時には、全国各地での調査に連れて行ってもらったりした。また、中村先生はアユのどぶ釣りと友釣りが大好きで、1980年頃には「米代の大アユ」を釣りたいと、すでに秋田県に就職していた僕に連絡をくれたこともあった。
 中村先生のことを思い出すと、きりがない。先生の影響か、僕もアユを食べるのが大好きで、その時はきまって中村先生のことを思い出す。こうしてみると、魚の味は単に科学分析できるものだけではなく、その中には調味料のように必ず思い出や人生が詰まっているのだ。
 さて、今日は元旦、米代川水系阿仁川で採れたアユを食べることにしよう。
写真1 アユの塩焼き 写真2 アユの焼き浸し
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