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料理教室「あきた地魚クラブ」 −魚を料理し、学び、美味しく食べよう−

第2回 ハタハタ



 NPO法人秋田水生生物保全協会主催「あきた地魚クラブ」の第2回が、11月18日(火)に開催されました。
 今回はハタハタでした。秋田県民にとってハタハタは「魂の魚」であり、「神の魚」です。普段は水深250m付近の深海に生息していますが、11月下旬になると産卵のため、ごく浅いホンダワラ類の藻場に、突然、一挙に大量にやってきます。県民はそれを「季節ハタハタ」、その卵を「ブリコ」、卵を持ったものは「ブリコハタハタ」と呼び、この魚がいなくては生きていけない、と熱愛しています。
 このハタハタ、昭和38年から50年まで連続して1万トン以上の漁獲がありましたが、平成3年には71トンまで激減し、これに対して秋田県の漁業者は自主的に3年間の全面禁漁を行いました。そして、解禁後は、事前にその年の漁獲量を決めるなど厳しい管理を行い、最近は漁獲量が1,500トン程度までに戻ってきたのです。
 しかし、漁獲量が増加するに従い単価が暴落し、最近は1尾当たり15円(浜値)と、解禁直後の数十分の一になってしまったのです。消費者は単に安ければよいと考えるかも知れませんが、これでは、漁業者は生きていくことはできません。そして、漁業者がいなくなれば、一番困るのは魚を食べられなくなる消費者なのです。
 こんなような経緯をふまえ、今回はハタハタを行ったのです。

 今回のハタハタのメニューは、マリネ(雄2尾)、煮付け(雌1尾)、しょっつる鍋(雌雄各1尾)で、1人当たり5尾です。しかし実際には、ハタハタの煮付けやしょっつる鍋は好きなだけとし、それ以外に塩焼きも作りました。
 今回は特に、しょっつるのことをを知ってもらうとともに、ハタハタという魚をできるだけたくさん食べて欲しいと思ったからです。本来、ハタハタは一挙に大量に来る魚であり、漁師はそれを必死でとり、僕たちはそれを一挙に大量に食べるものなのです。大量に食べるには、しょっつる鍋がベストです。頭と尾を切ることで、なか骨簡単にとれが食べやすくなります。

 本日の会場風景と料理は写真のとおりです。今回のハタハタは秋田県北部沖の底びき網で漁獲されたもので、沿岸に接岸した「季節ハタハタ」ではないので、ブリコは完熟前のものでしたが、市場の中でも最高のものを準備することができました。
最初に、ブリコが入った雌と白子の雄との見分け方です。腹側から生殖突起を見ることで、全員が即座に見分けることができるようになりました。また、ハタハタは雄より雌の方が大きいのですが、今回準備したものは大型個体を選んだので、8割以上が雌となりました。
料理はマリネからです。油で揚げるので少し面倒ですが、「ハタハタの唐揚げ」を大量に作ったとき、残ったものをマリネにするとよいとの説明がありました。次はブリコハタハタの醤油の煮付けで、最後に、しょっつる鍋です。しょっつるは、しょっつるを入れた水を沸騰させ、豆腐、頭と尾を切ったハタハタ、ネギを入れて終わりです。
きわめて簡単な料理ですが、豊かで神秘的な味わいです。

 全員で昼食をとり、その後は協会代表からの講義です。
 ハタハタの生態や資源管理の前に、魚醤の一つである秋田のしょっつるのほか、タイのナンプラー、ベトナムのニョクマム、イタリアのコラトゥーラをフランスパンの一口ごとに付けて食べてもらいました。
 タイやベトナムでは調味料の醤油はなく、カタクチイワシや小アジなどから魚醤をつくります。秋田でも、しょっつるはイワシや小アジ、コウナゴ、ハタハタなどから造りますが、一挙に大量にとられるハタハタを食べるには、塩味のしょっつるが必須です。
 魚醤は各国、各地にあり、基本的にはそこの大量にとる魚と海水から造る塩だけで、後は発酵する時間と漁業者の知恵が造るものなのです。
 結局、地魚・旬の魚は、安ければよいとか、逆に、高ければよい、というものではありません。「美味しいから食べる」のです。そして、地魚・旬の魚は単純な料理が、何よりもおいしいのです。
 今回のアンケートでは、「ハタハタが手軽に食べられることを知り、ぜひ家でも料理してみたいと思います」、「頭のとり方がよくわかった」、「ハタハタ料理と講義が丁度良い配分だ」などがありました。

写真1「神の魚」。 美しいハタハタの姿。 写真2 ハタハタの頭と尾を切る。準備はそれだけ。
写真3 男女、老若、全員で料理中。 写真4 ブリコが入った素晴らしいハタハタの塩焼き。
写真5 しょっつる鍋。驚嘆。感激。 写真6 昼食。味わう喜び。食の幸せ。
写真7 魚醤。多様な味の世界。 写真8 ハタハタの生態、資源管理などの説明。